意外と知られていない団地に関する6つのこと
「団地」と聞くと、「ああ団地ね」とイメージできる方は多いですが、
探してみたり、住んでみたりしてから気づくこともたくさんあります。
そんな団地の意外に知られていない6つのことを集めてみました。
1.マンションと団地ってなにが違う?
これは団地で、あれはマンション。
建物だけ見れば、同じようにも見えるこの2つは、いったい何が違うのでしょうか?
結論から言うと、建物としては同じです。
ただし、団地はご存知のように何棟かが集まっています。
その集まっている状態が団地なのです。
厳密にいうと、
「ひとつの敷地内に複数の建物があり、
その敷地や付属の施設が、所有者の共有になっているもの」
と、区分所有法という法律に定義されています。
また、一般的には「団地」というと、マンションのような集合住宅を想像しますが、
一戸建ての住宅が集まった「戸建ての住宅団地」もあれば、
工場が集まった「工業団地」もあります。
地域によっても「団地」のイメージは違うようで、高知の友人いわく、
高知で団地というと、戸建ての住宅団地を思い浮かべるのだそうです。
ということで、ひと口に団地といっても、さまざまですが、
このサイトでは、「団地」を集合住宅の団地として進めていきます。
2.団地が買える?
団地の代表といえば、UR都市機構の賃貸団地です。
なんといっても日本最大の大家さんですから、団地といえばUR賃貸といっても過言ではないかもしれません。
それとは別に、あまり知られていないのが、分譲の団地の存在です。
かつて日本住宅公団(公団)という組織がありました。
団地の分譲や賃貸も行っていましたが、1981年に解散。
いろいろと形を変え、公団が行っていた賃貸団地の管理はUR都市機構へと引き継がれました。
では、公団の分譲していた団地はというと、いま普通に売買されています。
不動産のサイトを見ると「旧公団」などと書いてあるのがそれです。
旧公団の分譲団地以外にも、買える団地は存在します。
それは、民間の事業者の分譲団地です。
1970年ごろには、今のマンションデベロッパーと同じように、
○○建設といった民間の事業者が、分譲の団地を造っていきました。
それらはこれまでも普通に売買されてきました。
「旧公団の分譲団地」「民間の分譲団地」
これら二つに共通することは、金額の安さです。
不動産サイトを見ると、他のマンションに比べて相当安いことに気付かれるのではないでしょうか。
築年数と駅距離を不動産価値の基準としている今の日本では仕方のないことですが、
それが逆に狙い目という考え方もできます。
団地をリノベーションして暮らしてみたい方にとっては、
賃貸の団地でDIYという選択ももちろんありますが、
分譲の団地を購入するという選択肢も十分あり得ると思います。
3. 団地内の組織ー管理組合と自治会
団地に暮らすと、関わることになるのが 管理組合と自治会という2つの組織。
名前は聞いたことがあるけれど、実際にかかわらなければよくわかりませんね。
これらの組織は輪番制といって、順番で回している団地がほとんどです。
ということは、いずれは回ってくる役目です。
回ってきてからあわてないために、今のうちから理解をしておきましょう。
まずは、管理組合。
こちらは団地の部屋の所有者(区分所有者)全員で構成されています。
購入したら必ず管理組合に入ることが法律で定められていますので、逃れられません。
その管理組合の代表が、数名の理事で構成される理事会と呼ばれるものです。
この理事の順番が回ってくるわけです。
管理組合の主な役目は、共有物の管理です。
団地は、自分の部屋の中以外は、みんなの共有です。
建物はもちろん、庭の木や、集会所など、団地の敷地内にあるものは共有です。
今風にいうと、シェアしているわけです。
それらの管理を怠ると、とんでもないことになってしまいます。
なので、みんなで管理しようというわけです。
管理するといっても、全部自分たちで作業するわけではありません。
業者に依頼をして実作業は進めます。
どこまでを依頼するかで、「全部委託」とか「自主管理」という区別がされています。
この管理がこれまでちゃんとできてきたかどうかで、団地の状態はまるで違ってきます。
「マンションは管理を買え」と言われますが、団地もまさに管理を買うべきです。
では、自治会は何をするかというと、住んでいる人の関係性やつながりに関する部分の役目です。
いわゆるコミュニティづくりですね。
お祭りや、運動会や、その他の色々な行事ごと、ごみ置き場の管理なども自治会の仕事としてやっています。
なので、構成しているのは、区分所有者ではなく、居住者です。
団地の部屋の所有者で住んでいない人は、管理組合員ではありますが、自治会員ではありません。
団地に賃貸で住んでいる人は、管理組合員ではありませんが、自治会員です。
最近の流れでは、管理組合、自治会ともに1年や数年で交代してしまうため、
継続的に取り組んでいくべき課題に対して成果が出にくく、
別の組織を作って、そこが継続的に取り組む形にしているところが増えてきているようです。
4. 階段という単位で動く
団地の中でも、中層と呼ばれる5階までの団地には、エレベーターがありません。
写真のように階段があり、その両側に玄関ドアが配置されています。
5階建てであれば、ひとつの階段を、2部屋×5階=10部屋で使っているということです。
団地では、この「階段」というのが、ひとつの単位となっていて、
「1号棟の4階段」といった呼び方で認識をします。
管理組合や自治会の回覧板をまわしたりといった作業もありますが、
もっと重要なのは、コミュニケーションの部分です。
普通に暮らしていると、他の棟はもちろん、他の階段の人と顔をあわせる機会はめったにありません。
ですが、同じ階段であれば、上り下りの時に顔をあわせることは不思議ではありませんし、
同じ階段の人同士が仲の良いところは、みんなで階段の掃除をしたり、
そのあとお酒を飲んだりといったことが行われているようです。
団地では、同じ階段に暮らす人がお隣さんです。
まずは、自分の階段の10部屋のコミュニケーションを大事にしていくのが
住みやすさへの第一歩です。
5. 郊外=不便ではない
不動産の広告を見ると、必ず書いてあるのが「最寄駅から何分」。
徒歩20分、や、バス15分徒歩3分、といった書き方をされています。
そして、安くで売られている郊外の団地は、ほぼ間違いなく駅から遠いです。
では、郊外の団地は、駅から遠くて不便かというと、必ずしもそうではありません。
駅から遠いことは事実ですが、だからといって不便ではないのが郊外の団地。
大規模な団地になると、住むところだけでなく、
スーパーや八百屋、学校、病院といった施設を近くに作っていることがほとんどです。
シャッター商店街などの話も増えてはいますが、しっかりと営業していけるところは残っています。
他にも、郊外の団地の近くに、大型のスーパーが出店している例もあります。
それがこちらです。
団地の目の前が、ヨークマートやイオンです。
夜も23時までやっています。
他にも、ホームセンターやファミリーレストラン、レンタルDVDも徒歩圏に。
でも、駅からは徒歩20分。
この環境を不便と見るかどうかは人それぞれですが、
大事なことは、不動産の広告だけを見ても判断できないことはたくさんあるということです。
現場を見てみないと本当のところはわかりません。
6. 耐震性に劣る?
「旧耐震基準」というのをご存知の方は多いでしょう。
1981年に新耐震基準ができたために、それ以前に建てられた建物はこう呼ばれるようになりました。
新耐震基準では、次のようなことが変わりました。
- 想定している地震の大きさが変わった。
- 地震に強いだけでなく、耐えられるかどうかを見るようになった。
- 地震の力の測り方が変わった。(高さによる変化が追加された)
- 建物のバランスが考えられるようになった。
わかるようなわからないような...。
それまでとは、地震に対する見方が変わったということは言えますね。
国土交通省の資料「マンション耐震化マニュアル」 P.14によると、
(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansei/2207taishin/1_1.pdf)
次のように書かれています。(以下、抜粋)
1)RC造・壁式構造、PC工法(中層)、中層の鉄筋コンクリート造(以下、「RC造」)、
壁式構造やプレキャストコンクリート工法(以下、「PC工法」)の建物は、
壁量が多いため、旧耐震基準のものでも一般に耐震性は高く、
わが国において過去の大地震でも大きな被害を受けたものは少ない。ただし、無理な増改築等をしている場合は、その影響で被害を受ける場合があるので注意が必要である。
5階建ての団地は、プレキャストコンクリート工法(PC工法)で建てられたものが多いです。
(建物の構造の違いも、マニュアルに載ってるので、ぜひ見てみてください。)
つまり、
「PC工法の団地は、1981年以前の旧耐震の建物といえど、耐震性は高い。」
ということです。
実際に、阪神淡路大震災のときにも、PC工法のマンションの倒壊は報告されていません。
もうひとつ、団地やマンションで大事なことは、メンテナンスです。
もちろん、建てた当時の基準を満たしていることは前提ですが、
新耐震でも、建ててからのメンテナンスを怠っていると、コンクリートは劣化が早まり、
鉄筋はさびて、爆裂してしまいます。
そうならないために、大規模修繕を定期的に適切に行ってきたかどうか。
それが重要です。
「マンションは管理を買え」と言われるように、
築年数と同じかそれ以上に、建てられてからのメンテナンスを重視する必要があります。
人と同じです。
生まれよりも、その人がこれまで、どんなふうに生きてきたか。
その方が大事だと思いませんか?
いかがだったでしょうか。
意外に知られていない団地に関する6つのこと。
全部知っていたという方は、素晴らしき団地マニアです。
知らなかったという方も、すこし団地に対する見方が変わったのではないでしょうか。
ぜひ友達に自慢してみてください。
スゴイといわれるか、変な目で見られるかは保証しませんが。