人口減少時代にふさわしい団地経営
最近、「人口減少」とか「日本経済」というキーワードにすぐ反応してしまいます。
先日もその分野の記事を読んでいました。
『日本を「1人あたり」で最低にした犯人は誰か~』というデービッドアトキンソンさんの記事。
記事へのリンクはこちら→『日本を「1人あたり」で最低にした犯人は誰か~』
ざっくりした内容は、
・世界最高の日本の労働者の生産性を、先進国最低にした原因は、経営者のモチベーションにある。
・1990年代までは、経営者が生産性を上げる努力をしてこなかったが、日本の人口増に助けられてきたが、これからの人口減少時代ではそうはいかない。
・経営者が危機感を持ち、人口減少社会にふさわしい経営をしていかなければ日本の問題は解決しない。
ということかと。
(記事ではもっとちゃんと論じてるのでぜひ読んでみてください)
記事を読んで想うことは、
『人口減少時代にふさわしい団地経営』ってどんなのか?ということです。
今回は、このことについて考えてみましょう。
1.団地を取り巻く状況
まず考えないといけないことは、これからの人口減少社会では、団地にとってどんな状況が進むのか?ということです。
代表的なこととしては、①外部居住者の増加 ②物件価格の下落 があります。
①外部居住者の増加
その団地以外に居住して、団地の部屋を所有している人たちを「外部所有者」と呼びます。
賃貸に出す目的で買った人や、相続して所有者となった人などがそうです。
外部所有者の数は、相続の増加に伴って今も増えていますが、これからはもっと増えてくるでしょう。
住んでいない人が所有しているのは良くない!という訳ではありません。
外部所有それ自体は悪いことではなく(私もそのひとりです)、
仮にその人たちが、自分の部屋の維持管理・運用といったことに関心が低いようであれば、それは問題です。
何も手を付けられず、放置されている空き部屋が増えると、その団地は活気がなくなり荒れていきます。
普段団地に住んでいる人なら、その状況は痛みとなって感じることができますが、
外部に居住している所有者にとっては感じにくいものです。
関心の低い外部所有者と、コミュニケーションがとれれば良いのですが、
年に一回総会資料を送るときだけというのが現状ではないでしょうか。
そのあたりがなかなか難しい課題なのです。
②物件価格の下落
日本の人口が減っているので、当然、住むところを探す人も減るでしょう。
それに加えて、日本では新築信仰が強かったので、これまでに作りすぎた住宅がどんどん余ってきています。
日本全国の空き家は、2016年には820万戸に達しています。
そうなると、需要と供給のバランスから、住宅の値段は下がっていきます。
これまでは、広いわりに他よりも安く買えるといった「価格的なメリット」が、
団地の強みのひとつでした。(少なくとも私はそう思っています)
これからは、中古の住宅がどんどん増えて価格競争になれば、
安く住めるところだらけになるかもしれません。
個人的には、日本の住居費は高すぎる、と思っているので、
安く暮らせるようになることは大歓迎です。
ただ団地にとっては、価格だけで勝負できなくなる日も近いのではないかと感じています。
2.団地の価値
では、そのような状況になっても団地が生き残っていく(=住み継いでいける)ようになるには、どうすればよいのか?
具体的な方法はこれだ、と断言できませんが、
記事に出ていた「経営者のモチベーション」が団地にも必要だと思うのです。
記事では、
”経営者が危機感を持って、これまでの「管理」から「経営」へと視点を移し、
労働者の生産性を上げることが重要”
とあります。
それを団地に当てはめて考えてみると、
団地では、いったい誰が経営者で、誰が労働者なのでしょうか?
それを知るために、まずは、”団地”という集合体が提供している価値は何か?ということから考えてみましょう。
”団地”が提供している価値は、大きく分けて、
①居住者にとっての価値
②所有者にとっての価値
③地域社会にとっての価値
これら3つがあるのではないでしょうか。
これら3つの対象【居住者・所有者・地域社会】が、
企業でいうところの【顧客】に当たります。
そして、”団地”は、その【顧客】に何かしらの価値を提供しているはずですし、
何らかの価値が提供できていなければ、
その団地は残念ながら、役目を終えてしまっていると考えられるかもしれません。
では顧客は、”団地”が提供している価値を、何を通して感じているかというと、
私は、それは、団地の部屋や空間や暮らしではないかと考えています。
団地の【部屋・空間・暮らし】こそが、団地の商品であり、労働者ではないかと。
3.将来の団地経営
では、その【部屋・空間・暮らし】の生産性をあげる【経営者】とは誰でしょうか?
これまでだと、管理組合や自治会という団地内の団体がその役割を担っていました。
管理会社が団地の管理をしているので、管理会社がしっかりすればよいのでは?
と思われるかもしれませんが、そこに頼るのは間違いです。
管理会社はあくまでも営利の組織。
いただくお金に見合わない仕事であれば、その団地から手を引いていくでしょう。
これまでの団地の管理で大切なのは、
住人や所有者による組織である管理組合や自治会がしっかりとかじ取りしていくことでした。
これからもそこは変わらないでしょう。
ただ、このまま時代が進めば、住人の中から「経営者」の視点をもって団地を経営していく人が出てくることが難しくなってきます。
そのときには、企業でいう、社外取締役や雇われ経営者に、
「団地の経営」に加わってもらうことも一案です。
その社外取締役や雇われ経営者は、どんな人なのかというと、
コンサルタントや不動産業、マンション管理士といった業種が思い浮かぶかもしれませんが、ちょっと違います。
この業種の人たちが、団地の経営に責任を持つかというと、そうではない場合もあります。(もちろん素晴らしい方もいらっしゃいますよ。)
経営者としては、もっと、団地の経営に責任を持って、
団地が生き残っていけなければ自分自身も生き残っていけない、
というぐらいの人が欲しいところです。
もしかしたら、今の職業の中にはいないのかもしれません。
じゃあどうすれば?!
私は、外部居住の所有者に、その可能性があるのではないかと考えています。
しかも、子どもの頃にその団地に暮らしていたような人たち。
具体的なイメージはまだわいていなくて、ただぼんやりとですが…。
団地の行く末を自分事として捉えることができて、
団地の状況が悪くなれば、自分自身も痛み(金銭的にも、心理的にも)を感じる。
そんな条件を満たす存在として、外部居住の所有者がぴったりだと思うのです。
もちろん、経営者だけでは会社が回らないのと同じく、
外部居住の所有者だけではどうにも回らないでしょう。
そこで、先ほどのマンション管理士などと協力してやっていくことが必要になると考えています。
近い将来、人口減少社会の中で、団地が向き合うことになる状況。
その状況の中、団地を経営するという視点を持って、より良い価値を提供していくために動ける人材。
それが誰なのか、今はまだわかりません。
ただ、いま確実に言えることは、
団地に関わる人たちが、危機感を持って団地の「経営」をしていくことができなければ、
これから先の人口減少社会の中で、自分たちが暮らしてきた団地を住み継いでいくことは不可能な時代がやってくるということです。