知ってますか?団地の構造
団地に住んでいる人たちは、築40年ぐらいで、「もう古いから…」ということをよく言います。
「団地=古い」と思っている人も少なくありません。
いったい団地ってどのぐらい長くもつんでしょう。
とっても気になるところですね。
そのことを考えるために、まずは建物の構造について知っておきましょう。
1.鉄筋コンクリートを知る
団地は鉄筋コンクリートの建物。
鉄筋の周りをコンクリートで覆った、鉄筋コンクリートで造られています。
不動産のチラシに、「RC造」などと書かれているのがそれです。
鉄筋とコンクリートの組み合わせは、とっても頑丈。
なぜなら、鉄筋とコンクリートが互いに短所を補い合っているのです。
鉄筋は、引っ張る力には強いけれど、圧縮されるとぐにゃっと曲がります。
一方、コンクリートは、圧縮されるのに強いけれど、引っ張る力には弱いです。
その二つを組み合わせて、おたがいの短所を補い合っているのが鉄筋コンクリート。
おたがいさまな造りなんですね。
さらに、コンクリートはアルカリ性です。
アルカリ性のコンクリートで鉄筋を覆うことで、鉄筋が錆びる事を防いでくれています。
まさに最高のパートナーですね。
でも、このアルカリ性も永遠に続くわけではありません。
コンクリートは徐々に中性になっていくのです。
で、コンクリートが中性になると、中の鉄筋はさびやすくなります。
また、コンクリート表面からの水分の侵入や、クラックなどから侵入する水分によっても、鉄筋はさびてしまいます。
鉄筋がさびるとどうなると思いますか?
錆びた鉄筋は容積が増して、覆っているコンクリートを内部からはじけさせます。
これを爆裂現象(ポップアウト)といいます。
ボロッと崩れたコンクリートの奥にさびた鉄筋が見えてしまいます。
こうなると、それまで覆ってくれていたコンクリートがなくなり、
さらに鉄筋はさびやすくなって、どんどん崩壊していきます。
鉄筋コンクリートがいつまでもつのかは、いかに鉄筋を錆から守るか、にかかっているといえます。
設計段階では、鉄筋がどのぐらいコンクリートに覆われているかを表す「かぶり厚」と呼ばれる厚さを増やしたりします。
かぶり厚を増やせばその分長持ちしますが、当然、その分コストもかかりますし、建ててしまってからではどうしようもないところです。
では、建ててから、どうにか鉄筋を守る方法はないのでしょうか?
あります。
それが、大規模修繕です。
コンクリートの中性化は、熱や紫外線などの影響で外側から内部に進行していくようです。
建物の外壁塗装は、コンクリートを熱や紫外線から守る役目があるんですね。
その外壁塗装も永遠ではなく、次第に劣化していくため、定期的に塗り替える必要があります。
それを怠ると、コンクリートの中性化が進み、内部の鉄筋を錆びさせることになります。
ですので、外壁の塗装をしっかりと更新していくことが、重要なメンテナンスのひとつなのです。
2.ラーメン?壁式?PC?
鉄筋コンクリート造にも種類があり、
柱と梁で構造体を構成している「ラーメン構造」と、
壁、床、天井の面で構造体を構成している「壁式構造」があります。
壁式構造は、非常に剛性が高いとされています。
また、ラーメン構造の住戸内に見られる梁や柱などの出っ張りは無く部屋がすっきりとできますが、
間仕切りの壁が構造体である場合、それを壊して撤去することができないため、
間取り変更の自由度はラーメン構造の方が高いと言えます。
さらに、壁式構造は、
コンクリートのパネルを工場で生産する「プレキャスト工法(PC)」と、
建設現場でコンクリートを流し込みながら造っていく「現場打ち」とがあります。
現場打ちに比べて、プレキャストのコンクリートパネルは品質が高く、性能が良いとされています。
3.耐震性能のお話
団地に住もうかどうしようか検討している人の、大きな悩みポイントは「耐震性」ではないでしょうか。
特に、築年数が1981年以前の場合は、旧耐震基準と呼ばれ、より不安にさせているようです。
阪神淡路大震災での被害状況を見ると、
壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造(PC造)の建物2032棟のうち、
倒壊・大破の建物は皆無で、
小破以上と判定された建物は37棟であり、
その37棟のうち、不等沈下など地盤に起因する被害が18棟となっています。
全2032棟のうち、
地盤による小破の被害が18棟、建物の構造による小破があったのが19棟です。
PC造の地震に対する強さがうかがえますね。
そのPC造の2032棟のうち、
旧耐震基準(1981以前)で建てられたものは、910棟ありました。
その910棟のうち、地盤による被害は8棟、それ以外の被害は17棟となっています。
耐震基準の話はよく耳にするところですが、
壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造(PC造)の建物に限って言えば、
新耐震基準に移行する時に厳しくなった数値(壁厚や壁量、階高、コンクリートの強度など)は無く、
地震時に建物に加わる水平力を計算する定数が変えられただけとなっています。
ですので、1981年以前の建物でも、それだけで危険だというのは行き過ぎていると思います。
簡易の耐震診断だけでも受ければ安心できるかもしれませんが、
それだけでも相当の費用が掛かるため、診断を実施していない団地もたくさんあります。
壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造(PC造)は、
強度的にはとても性能が良いものだと考えられます。
しかし、建てられた段階で性能が良かったからといって、安心しきっていいとは限りません。
建てられたから今までの間にどういったメンテナンスがされてきたかということが、なにより重要です。
最初に書いたように、大規模修繕で外壁塗装をしっかりと更新していくことや、
クラックなどへの対処をきっちりとしていくことが、
鉄筋コンクリートの寿命を左右します。
結局、これまでにどれだけの愛情を建物に注いできたか、
が問われるということです。